仕事や課題の本質を見極める視点を養うには?ユーザビリティを例に考える

こんにちは、プロジェクトマネージャーのコウです。
本日は仕事に於ける本質を見極める視点について考察したいと思います。
 
ドリルを買う人が欲しいのは穴であるマーケティングの分野で「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」と云う格言があります。
これは経済学者セオドア・レビットの言葉ですが、マーケティングの分野に関わらず重要な視点だと意識しています。
ものづくりの考え方で重要なヘンリー・フォード「もし顧客に彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう。」も近いものがありますね。
 
乱暴にざっくり要約すると「物事の本質を見極めろ」と云う事だと思いますが、なかなか解っていても実践するのが難しいなと感じます。
 
昔カスタマーサポートのスタッフとミーティングをしていた時に、サポートに於ける改善課題を質問した処、
「BiNDのサーバー設定に関する問い合わせが多いので、顧客データベースから簡単にFTP情報を確認して案内出来る様にしてもらいたい。」
と云う要望が上がりました。
確かにサーバー設定は少しハードルの高い設定なので問い合わせが多い事は解っていたのですが、そのスタッフからの要望のゴールは『サポートし易くする』であってユーザーの本質的問題解決ではありませんでした。
問い合わせしているユーザーが求めているのは『適切にサーバー設定を行う』であり、その問い合わせをする事そのものは目的ではありません。
ですが、往々にして自分の目の前の仕事とだけ向き合ってしまうとそう云う考え方になってしまいがちです。

 

BiNDupサイト設定

その問題解決方法を検討した結果、そもそも複雑なサーバー設定をせずに済む仕組みに変えれば良いと云う事で、プルダウンから選択する事で自動設定される様に機能開発しました。
それによって上記の問い合わせが大きく解消出来たのは云うまでもありません。
 

薬

少し話は逸れますが、病気や健康を考えた時も同様に捉えています。
例えば胃が痛いと思った時に胃薬を飲む方がいると思いますが、胃薬は胃痛の原因そのものを解消してはくれません。
悩みやストレスがあったり、暴飲暴食がたたっていたり、それらの原因を取り除かないと胃痛は治らず薬を飲み続ける事になります。
症状と原因を分けて考えると云う視点なのですが、症状だけ何とかすれば良いと云う対症療法は結果的に更に大きな問題を招く可能性を齎します。
仕事に於いても症状と原因を分けて見極める必要があると考えています。
 

船

例えば船底に穴が空いて水が入り込んで来たとします。
船が沈まない様に水をバケツで掻き出す事も大事ですが、最も重要なのは穴を塞ぐ事です。
しかし穴を塞ぐのは調査や手法の模索も必要な大仕事で時間も掛かる反面、水をバケツで掻き出すのはすぐに出来ますし何度も行えます。
後者の方がやる事が明確ですぐに手を動かせる、そして手を動かし続けられる安心感と云う仕事上の落とし穴があるのではないかと。
勿論穴を塞いでいる間に船が沈んでは元も子もないので応急処置としての水の掻き出しは必要ですが、その意味性を理解して仕事に臨んでいるかが重要なのではないかと思います。
 
 

症状と原因

 
 
前述したカスタマーサポートの例は、症状である『問い合わせにどう答えるか』と向き合っていた状態です。問い合わせの数だけ対応しなければいけないので手数が増え消耗します。
対して『サーバー設定を簡易化する』と云うユーザーの本質的問題(原因)に向き合い改善する事で、症状そのものが無くなりました。
しかもユーザーはユーザビリティが改善され結果として満足度が向上し、仕事の質も向上します。
この様な視点を持てるかが大事なのではないかと思います。 
 
『その仕事は何の為に行うのか』、『その仕事によって何が齎されるのか』、『その仕事は本質的な問題を解決出来るのか』を問う姿勢と視点を養う事は常に忘れずいたいものです。
セオドア・レビットの言葉はそこを意識させてくれます。

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